「あ痛たたぁ、仕事で腰を痛めたんだけど、会社の労災でなんとかならないのかな?」
HANA
TAO
「確かに、会社の仕事で痛めた腰痛なら会社の労災でなんとかしてもらいたいですよね。」
其れは、非外傷性の疾患だからです。
つまり、腰痛や腱鞘炎などは、日常生活やスポーツをしていたり、年をとったり運動不足でも起こります。
ということは、会社での仕事が原因で起こったと証明することが非常に難しいのです。
そこで、この「会社での仕事中に痛めた腰痛なんだから労災って使える?」では、腰痛と労災について考えます。
労災と認められるには
たとえ日常生活に問題があったとしても、その上でなお、業務上の原因が問題といえるほどの劣悪な労働環境によって多大な負担がかかった、と調査により確認されれば認定されます。
具体例
- その作業を行えば、誰が行っても腰痛となる疑いがあるほどの重労働である
- 会社の指示によって,無理な姿勢や作業を指示・強要されていた
- 過去に同じ作業をしていた者に、労災や疾病が発症した者が確認できる
要は、加齢や体力の低下など、業務従事者個人の因子に関係しない視点で、その労働量や労働内容が、「あまりにも負担が多い」と認められるもので、それが長期間にわたって継続するものであることです。
よくあるのが、「以前より少しは腰痛があったのですが、仕事で重い物を運ぶ業務を日常的にやっているうちにだんだんひどくなったのですが、労災を認めてもらえますか?」というケースです。
このようなケースが多いのではないでしょうか?
このケースの場合、通院や入院も時々必要で、そのため仕事も休みがちになってしまったそうです。
ある朝出勤前に腰痛がひどくて、くしゃみをした拍子にぎっくり腰みたいになって病院に入院されたそうです。
入院時は歩行困難で、ベッドからの起き上がりもできず、食事も一人で摂れなくなったので労災を考えられたようです。
認定率=5%
仮に、会社での仕事が原因で起こったと証明することができ、労災申請を行っても、認定率は5%程度だという報告もあります。
腰痛の労災認定リーフレット
厚生労働省では、労働者に発生した腰痛が業務上のものとして労災認定できるかを判定するための、「業務上腰痛の認定基準」を出しています。(HP:https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/111222-1.pdf)災害精の原因による腰痛
負傷などによる腰痛で、次の①、②の要件をどちらも満たすもの- 腰の負傷またはその負傷の原因となった急激な力の作用が、仕事中の突発的な出来事によって生じたと明らかに認められること
- 腰に作用した力が腰痛を発症させ、または腰痛の既往歴・基礎疾患を著しく悪化させたと医学的に認められること
災害姓の原因によらない腰痛
- 突発的な出来事が原因ではなく,重量物を取り扱う仕事など腰に過度の負担がかかる仕事に従事する労働者に発症した腰痛で、作業の状態や作業期間などからみて、仕事が原因で発症したと認められるもの
さらに、それぞれの内容を具体例を示して解説されていますので、該当するか否か判断するうえで参考になります。
上記のケースの、「ぎっくり腰」(病名=急性腰痛症)は、日常的な動作の中で生じるので、たとえ仕事中に発症したとしても、労災補償の対象とは認められません、
としていますが、発症時の動作や姿勢の異常性などから、腰への強い力の作用があった場合には業務上と認められることがあるとしています。
因果関係を証明することが重要なことがわかりますね。
会社が労災を嫌がる理由
会社は従事者が労災を申請することをあまり好みません。
なぜでしょう?
それは、上記の判定基準からもわかるように、会社が長期間にわたって、そのような症状が発生する労働環境を強いていたということにつながるからです。
労働基準監督署は当然、このような労働環境は不適切であるため、改善の指示・監視が行います。
会社にとっては、これまでの労働環境を一朝一夕に改善できるはずもなく(できてるようであれば、すでに改善しているはずです)、場合によっては改善のために多額の出費を必要とするのです。
会社としては、労災申請を嫌うのはこのためです。
従事者が労災の申請をしただけでも労働基準監督署からの調査口実になるため、労災認定となればその従事者のことをよくは思わないのもわからないではありません。
こうなると、会社に残って仕事をすること自体がストレスになり、会社を辞めなければならなくなることもあります。そのため、従事者自身も労災の申請を控えてしまうのかもしれませんね。
自分で申請は可能か?
労働基準監督署に提出する書類
- 療養費請求7号様式:社会保険から労災保険への切り替えのための申請書
- 領収書
様式は労働基準監督署で配布あるいはHP(https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/040325-14.html)からダウンロード可能です。
しかし、問題なのは、様式の会社記入欄を会社に記入してもらわなければならないことです。
なかなか労災を認めない会社にお願いするのは難しいですよね。
会社が記入を拒否した場合は、会社記入欄は空白のまま労働基準監督署に提出することができるので大丈夫ですよ。
それに、病院の領収書が必要になります。これには、療養費請求7号様式の傷病名を病院で書いてもらい、レセプトにも同様に書いてもらいましょう。
まとめ
この「仕事で腰を痛めたんだけど、会社の労災でなんとかならないのかな?」でわかったように、労災認定は医療費は会社が負担してくれるので自身の経済的負担はないため認定された方が一見よいことのようですが、後々会社に居づらくなって辞職となってしまうことも考えてしまいますよね。労働基準監督署も従事者の退職や会社の負担を増大させることを目的としているわけではないのですが、制度の使い方によっては従事者の退職や会社の経費増大につながってしまう一面を持っているようです。
衛生管理者(第1種)の私としては、制度の本来の目的に沿って、従事者と会社の両方での安全な労働環境の確保に貢献したいと考えています。
POINT
・腰痛で認定されるための規定について調べました
・労災認定される割合が低い原因とその理由について考えました
・会社側の労災に対する受け取り方を考えました
・そのうえで自分で申請しない場合についてまとめました
・労災を使わないでいいような職場環境の改善・提供について考えました
・労災認定される割合が低い原因とその理由について考えました
・会社側の労災に対する受け取り方を考えました
・そのうえで自分で申請しない場合についてまとめました
・労災を使わないでいいような職場環境の改善・提供について考えました