仕事中のぎっくり腰(腰痛)。労災となるのか?

08. 👨‍🔬 産業理学療法士

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「あ痛たたたぁ。仕事中に、ちょっと重い荷物を持ち上げた時に腰を捻っちゃって、ぎっくり腰みたい。仕事にも行けなくって、困まっちゃうわ。これって労災だよね。」

HANA
TAO

「労災って言ってあげたいけど、実は腰痛の労災って認定されにくいんだよね。」

この記事「仕事中のぎっくり腰(腰痛)。労災となるのか?」では、腰痛が労災認定されにくいことについて考えてみました。

なぜなら、仕事中にかがんで物を拾おうとしたり、Hanaさんのようにお持物を持ち上げようとしたり、ちょっとした拍子で腰を痛めることってありますよね。それで仕事まで休まなくてはならなくなったら、その治療費やその間の給料など心配になりますよね。一度の通院ならまだしも、何度も通わなければならなかったり、仕事自体を続けられなくなったりしたら出費も心配になります。

せめて労災が認定されればと思うところですが、腰痛での実際の労災認定について知っておきたいことがあります。

この記事では、腰痛が労災とみなされる条件などを含めて考えてみました。

記事を読み終えると、もし仕事中に腰痛になった場合、どのように考えればよいのかその情報の一つとして役立つと思います。

腰痛の労災認定は業務に起因するかどうかの特定次第

腰痛の労災認定は業務に起因するかどうかの特定次第

労災に認定においてその業務に起因しているかどうかが重要になります。

厚生労働省(労働基準監督署)では、腰痛を2種類に区分して労災認定を受けられる要件を定めています。

災害性の原因による腰痛

「仕事中の突発的な出来事によって急激な力が腰に掛かり、その力が腰痛を発症させたと医学的に認められること」

急激な力が腰に掛かり、腰痛の既往歴や基礎疾患(椎間板ヘルニア、変形性脊椎症、腰椎分離症、すべり症など)を著しく悪化させた場合も含みます。

災害性の原因によらない腰痛

「重量物を取り扱う仕事など、腰に過度の負担がかかる仕事に従事し、作業状態や作業期間などを考慮して、仕事が原因で腰痛を発症したと認められること」

突発的な出来事がなく、仕事そのものが原因となるケースです

労災の認定がおりれば労災保険による補償(無料で治療等)を受けることが出来ます。

ただし、労災保険による補償の対象となるのは、その前の状態に回復させるための治療に限られます。

さらに、医師により療養の必要があると診断されたものに限られるという条件があります。

ここまでくると、腰痛で労災を申請しても認定されるのがいかに大変なのか、いいかげん面倒に思ってしまいますよね。

腰痛の場合はその仕事をしていなくても発症した可能性があるから

腰痛の場合はその仕事をしていなくても発症した可能性があるから

例えば、仕事中にケガや骨折をした場合は、従事していた業務に因るものとの因果関係が明確ですが、腰痛の場合はその仕事をしていなくても発症した可能性があるからです。

そのため、業務に起因するという特定ができるかどうかが問われるので、仕事中に発症したとしても簡単には労災認定を受けられないことになります。

非災害性腰痛の労災認定件数(2015年-安全センター調べ)

全国の非災害性腰痛の方で労災認定を受けることが出来た件数はわずか39件でそうです。

同年度の災害性腰痛は2,950件でした。

非災害性腰痛という疾病自体が整形外科医に認知されておらず、そもそも労災請求がほとんどされないこと、また請求しても認定基準の硬直した運用により不支給決定される(認定率約40%)ことが、要因であると思われるとしている。

ぎっくり腰(災害性の原因による腰痛)

一般的に言われる「ぎっくり腰」は、特に組織の損傷等や疾病等がなければ急性腰痛症と診断されます。

経験がある方も多いと思いますが、日常的な動作でも生じます。

そのため、労災認定の条件となるその業務に従事していたから生じたという因果関係が乏しいため、例え仕事中に発症したとしても、原則的には労災認定は受けることは難しいようです。

ただし、通常と異なる不自然な動作や姿勢になってしまい、急激な強い力が腰にかかった場合は労災認定を受けることが出来ることあります。

看護や介護、物品の整備や移動など、患者や機械・製品を大切に扱おうとすると相対的に不自然な姿勢にならざるを得ないですよね。

そこに、患者が急に動いて転倒しそうになったために支えたり、機械や製品が動いたり落ちそうになったために支えたりすることでぎっくり腰になってしまう場合です。

それでも労災認定を受けることが出来るとは断言できないうことですから、認定はかなり難しいといえるでしょう。

筋肉等の疲労を原因とした腰痛(災害性の原因によらない腰痛)

筋肉の疲労を原因とするもの

腰に過度の負担がかかるような業務に、比較的短期間(約3ヵ月以上)従事したことにより、筋肉等が疲労して発症した腰痛など。

骨の変化を原因とするもの

重量物を取り扱うような業務に、相当長期間(約10年以上)従事したことにより、骨が変化して発症した腰痛など。

 ただし、腰痛は年を取っても年齢とともに発症することも多いので、骨の変化が通常の加齢による骨の変化の程度を明らかに超える場合に限って認められるようです。

腰痛の労災認定を受けられなかった場合

腰痛の労災認定を受けられなかった場合

労災認定が認められるかどうかは、事前に推測することは難しいです。

なので、とりあえず労災申請をして、労働基準監督署の判断を待つしかありません。

労災認定が受けれなかった場合は、労災にならないため自身の健康保険に切り替えて治療を受けることになります。

つまり、業務との因果関係は認められないということになるので、業務外の傷病という扱いになります。

産業理学療法士の関わり

産業の発展や保障に対して発展してる諸外国では、企業が産業保健にも力を入れているようです。

腰痛が発生しないように作業環境を見直したり、個人の体格等に応じた能力を評価し補助機器の利用を促進したり、作業台や椅子の高さを個々人に合わせて調整したりしているようです。

仕事中の腰痛が労災認定を受けるのは難しい

仕事中の腰痛が労災認定を受けるのは難しい

もし仕事中になった場合、当然仕事中だから労災を認定されると思っていても実際はかなり難しいことが分かりました。

しかし、もし仕事中に腰痛になった場合どうすべきなのでしょうか?

実際、仕事中に腰痛になった場合は、労災が認められるかどうか分からなくても、上司に状況を説明したうえで病院での診断・治療を受けるようにしましょう。

労災の現場でよく起こるのは、事故発生時には本人は大したことはないと思い込んでしまい、そのままにしてしまうことです。

数日たってから、我慢できなくなって病院を受診するということも結構あるようです。

こうなると業務上の原因によるものか、他に原因があるのか判断がつきにくくなります。

腰痛発生時の状況もあやふやになってしまいます。

腰痛が起こった本人は労災のことはあまり意識していないことが多いでしょうから、相談を受けた上司や総務あるいは人事の方が労災を視野に入れて病院受診を進めることが出来るとよいのですが・・・。

それに労災の可能性があるようであれば、後の手続きの煩雑性を配慮して、はじめから労災保険指定の医療機関の受診を勧めてほしいところです。

労災の認定が受けれなければ治療費を自腹しなければならないと放置して、悪化してしまうとそのあとの仕事にも影響が出てしまいます。

早期の適切な治療により、状態が落ち着けば、労災にならなかったっとしても、出費は最小限に抑えることが出来ます。

逆に、治療を受けなければ、因果関係も不明確になりますし、医師の判断もできなくなります。

後に労災が認められれば、その治療費は帰ってきます。

労災認定を受けるまでの流れ

労災指定の医療機関の場合

通常は会社の人事担当者に処理を委ねることになります。

もし人事担当者が非協力的である場合は、所轄労働基準監督署に確認するといいでしょう。

・会社に腰を痛めたと報告→請求書に会社から証明をもらう→労災指定の医療機関で受診(無料)→受診した医療機関に請求書を提出→労働基準監督署による調査→医療機関に治療費お支払い or 不支給決定

労災指定ではない医療機関の場合

治療費を一旦自身で負担したのちに、労災認定の申請を行い、療養給付の請求を行います。

通常は会社の人事担当者に処理を委ねることになります。

・会社に腰を痛めたと報告→労災指定ではない医療機関で受診(有料)→請求書に会社・医療機関で証明をもらう→労働基準監督署に請求書を提出→労働基準監督署による調査→指定口座へ費用の支払い or 不支給決定

このとき、注意しないといけないのは、労働災害については健康保険を利用することが出来ないことです。

病院受診の際に、労働災害であることを話して、健康保険を適用せずに治療を受ける必要があります。

労災で受診していても、最終的に労災が認められなかった場合は、遡って健康保険を適用することが可能です。

会社が労災に非協力的!?

会社が労災に非協力的!?

多くの会社は労災の申し出に対して適切な対応を行ってくれます。

しかし、労災処理についての知識や経験がないといった理由から労災申請にたいして二の足を踏むケースがあるようです。

また、あってはならないことですが、労災認定となれば労働基準監督署が業務内容に問題はなかったか確認するために職場に立ち入ることを嫌って、労災申請を辞退するように勧めることもあるようです。

しかし、ぎっくり腰が原因で会社にとっての人財(あえて財の字を当てています)である社員が退職してしまうことになったり、後日会社としての対応が不十分であったとして安全配慮義務違反が問われるような事態へ発展してしまうことがないように、速やかに働く人の安全と健康を守れるように、会社としても最善をつくすことが求められます。

長く勤めている会社やこれから長く務めるつもりである会社から、労災の辞退を勧められると断りにくく、結局自身が我慢してしまうケースもあるようです。

労働基準監督署は本来、働く人の味方であるはずなのに、より安心して安全に仕事ができるように従事内容を見直すきっかけとなるはずなのですが、経営者からは逆に問題を指摘しに立入に入られるとなってしまう矛盾があるようです。難しいですね。

このような場合、従業員自ら労働基準監督署に手続きをすることが可能です。

まとめ

仕事中のぎっくり腰(腰痛)が労災認定となるか?ということについてまとめました。腰痛では仕事との因果関係を明確にすることができなければ認定されることは難しいということが分かりました。しかし、腰痛に限らず、会社で働く人々がより安心して安全に仕事をすることが出来るように、上司や総務、人事担当者の方が労災について十分に把握して適切に指示をしてあげることや労働者自身も労災について知っておくことが必要だと感じました。

POINT・仕事中のぎっくり腰は労災認定されにくい
・労災の認定には仕事との因果関係を明確にすることが重要
・労災について上司や総務、人事担当者が把握しとくこと
・労働者自身も労災について知っておくこと

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TAO

悠々自適な経済的自由人に憧れながらも、人として何ができるか模索の毎日です。修士課程で複雑系システムに魅了され頑張らない人生が理想です。

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